ドローン鑑定

●問題提起(対象不動産の確定)

 寺院墓地の鑑定事例です。
 どのように対象不動産を確定し、鑑定評価を行うかがポイントです。

【登記事項】
 000番:境内地、1,229㎡、宗教法人所有…地積測量図なし
 000番1:境内地、409㎡、宗教法人所有…地積測量図なし
 登記地積 計1,638㎡

【住宅地図・公図・地番参考図】
 上記2筆の土地は、現況にて寺院、墓地、月極駐車場で構成されています。
 住宅地図では、北側境界が直線ではなく、南西角に角切りが見えます。
 これに対し、公図は1/300の縮尺付きであるものの、北側境界は直線で、南西角は直角です。
 地番参考図は、北側境界と南西角切りは住宅地図と一致していますが、地番は000と000--90と表示され、公図の地形と異なります。
 


 本件において、寺院墓地としての対象不動産はどのように確定されるのでしょう?
 まず、地番参考図の000は、単に000番と000番1の分筆が反映されていない表示です。
 また、地番参考図の000--90は、月極駐車場のため固定資産税が課税されている部分の表示であり、その範囲は231.58㎡であることが市と納税者にて確定されていました。
 公図に関しては、所有権境を示す有力な資料であり、南西角切り部分については、直角形態で所有地があると見込まれるところ、周辺地状況や建築確認等により、そのとおり考えるのが相当と判断されました。

 以上の考察は、従来の鑑定評価のとおりです。
 よって、これ以上の作業を行わない限り、本件対象不動産は000番、000番1のうち現況寺院墓地である1,406.42㎡(=登記地積1,638㎡-駐車場用地231.58㎡)として評価が行われる可能性があります。
 果たして、そのとおり鑑定評価して良いのでしょうか?

●ドローン鑑定(対象不動産の確認)


 ドローンによる空撮データを解析したオルソ画像は以下のとおりです。
 北側境界は、住宅地図や地番参考図のとおり、直線ではないことがわかります。
 この現況を計測した結果、駐車場用地231.58㎡を除く、寺院墓地の範囲は1,917.50㎡と計測されました。



 なお、解析する前の元データは、1画像あたり5472ピクセル×3648ピクセルで約10MBの容量があり、概ね1cm/ピクセルで撮影していますので、以下のとおり拡大し、境界である縁石まで確認できる精度があります。



 ちなみに、一般に広く使われているグーグルの航空写真は、以下のように拡大しても詳細を読み取れないレベルの精度しかなく、鑑定評価において採用しうる地積を計測できるようなものではないのです。



 いずれにしても、本件対象不動産を1,406.42㎡(=登記地積-駐車場用地)として鑑定評価するのか、現況地積1,917.50㎡として鑑定評価するのでは大きな違いが生じます。
 当然、現況地積1,917.50㎡は、画像上の機械的計測でしかありませんので、専門家が実地に測量した結果とは差異を有するものではありますが、少なからず最新の空撮技術により得られた確からしい数値なのです。


●ドローン鑑定(資料作成)

 本件対象不動産については、現況地積と登記地積が異なるとともに、000番と000番1の境界が不明確であるため、それらをもって寺院部分と墓地部分の範囲及び地積を確定することは合理的ではありません。
 また、この墓地は、区画整然とした分譲墓地ではなく、墓所の配置を示す図面も無い古くからの寺院墓地であるため、鑑定評価にあたっては、その墓所区画や墓所面積を示す資料(現況見取図)があれば大変助かります。
 弊社では、独自のマニュアル化により、その作業を可能としています。



 以上のとおり計測した結果、本件において現況墓地と認定すべき範囲は954.76㎡と計測されました。
 これを基に、各墓所に評価符号を配し、墓所地積を算定し、一覧表示して鑑定評価を行うことが可能となります。


●ドローン鑑定の説得力

 総じて、地目が境内地であろうが、墓地法第10条の許可がどのようになっていようが、現況を抜きに説得力のある鑑定評価は実現しません。
 特に、その依頼目的が「裁判」であった場合、原告・被告で、片や登記地積での鑑定評価、片や現況地積での鑑定評価で争うとなれば、当然のことながら、結果は見えているでしょう。
 依頼目的に応じ、見せるべき人に説得力のある現況事実を示す。それが「裁判」であるなら裁判官にそれを示す、というのがドローン鑑定の神髄です。



<付記>
 本件空撮実査は、当該寺院からの依頼で、近隣配慮も可能な状況にて実施しました。
 気になったのはお墓を上から撮影して良いのか?でしたが、住職曰く、仏様を上から見ても失礼ではない。とのことでした。。
 また、住職からは、今後の墓所の配置や、本堂の建て替えに有用な資料になったと喜んでいただけました。