ドローン鑑定

●問題提起(立入困難・目視困難・資料の信頼性)

 一般に、公共事業用地の鑑定評価においては、標準地を設定して鑑定評価を行い、必要に応じて各画地への個別格差率を求めます。
 この事案は、面的な林地が事業区域であり、標準地は山間の中庸的位置に存する1筆と選定されました。

【1/2500地図・航空写真】
 1/2500地図を見ると、事業区域内に車が通れそうな道が見られるとともに、各所各様の地勢状況が見とれます。
 これは単なる山林じゃないな、というのが初見で、それは航空写真を見ても同様に感じました。
 しかし、1/2500地図と航空写真を照合しても、これは本当に現況と一致しているのか?という疑念がぬぐえず、現状はいったいどのようになっているのか?が大きな課題となりました。
 ちなみに1/2500地図は平成16年撮影のデータを基にしており、航空写真は平成20年に撮影されたものです。



 実地調査は、事業担当者の立ち会いの下、立入調査を行いましたが、上記資料に見られた道は現存せず、雑草木をかき分け、林間を進み、なんとなくでしか自分達の居所もわからないという状況でした。
 また、高台から見下ろせる範囲は限られており、これで本当に対象不動産の確認をしたということになるのか?上記各資料を採用して鑑定評価を行っていいのか?という感じでした。


●ドローン鑑定(近隣地域及び対象不動産の確認)

 ドローン空撮を実施した結果は以下のとおり、既に上記航空写真が撮影されてから10年以上を経過し、道跡らしき筋は見られるものの、既に多くは原野山林化している状況でした。
 実際に事業担当者とともに現場に立ち入って事実確認もしていますし、鑑定評価上は価格形成に影響を及ぼす林道は存しない。というのが結論になります。



 ただ、それでも画像の中下部に見える白地の部分が気になります。
 およそ、昔は道が通じていて、何がしか作業等に使用されていた平地部分ともみられ、これが現在どのようになっているのか?標準地と区別されるべきどのような価格形成要因があるのか?が問題となります。


●ドローン鑑定(詳細な現地確認)



 空撮画像は概ね3cm/ピクセルで撮影しています。
 パソコン上でアップして見ると、確かに元は道であったろう名残りが見られますが、現況として轍などは確認できず、人が立ち入っている様子は感じられませんでした。
 また、白地部分に向かって幾筋も水が流れた跡が確認され、降雨時には水溜りになっているとも思料され、過去状況との比較により、いずれはここも原野山林化する可能性が高いと思料された次第です。


●ドローン鑑定の説得力

 さて、一番大きな問題は、1/2500に見られた各所各様の地勢状況です。
 地勢状況は、以前から大きく変わりようのないものとして、1/2500地図を前提に各画地毎の斜度等を測り、評価書に示せば、当然個々に差異があることは明白であり、個別格差が付かないという方が変に思えます。
 しかし、そのような数値のみにとらわれることなく、以下のような三次元画像をグルグルと眺めれば、確かに元からの自然林部分と原野山林化したであろう低草木の部分の違いはあるものの、全体として丘陵地勢を成しており、各所であまり差はないのではないか?という見解に至り、現地実査に同行された事業担当者もこれに同感したという次第です。



 立入調査が困難であり、遠景目視も困難であり、そのような状況で不動産鑑定士は対象不動産を確認したと言えるのでしょうか。
 また、可能な限り資料を収集したとして、現場との照合確認を充分にできない状況で、それら資料を採用した鑑定評価を行ってよいのでしょうか?
 そのような事案にこそ実力を発揮できるのがドローン鑑定です。

<付記>
 本件空撮調査については、ドローンに興味を持った市の職員さんが多く立ち会われました。
 ドローンは、地方自治体にとって各種事業や自然災害への対応等において、今後不可欠になっていくツールと考えられます。
 但し、現実には、失敗失敗を繰り返すものでもあり、一定レベルの成果にたどり着くのは結構大変です。
 また、弊社はこのドローンに10億円の対人対物保険を掛けて業務を行っています。
 そのような観点では、自治体職員が自らドローン作業を行うのではなく、外部委託して有効にその機能を発揮するのが良いと感じています。